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債権管理で時効を防げ

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売掛金等の請求において回収がしばらくの間滞ったケースでは、「時効」に注意しなければなりません。時効とは、権利を行使できるにもかかわらず、一定期間行使しない場合にその権利が消滅してしまう制度です。
相手方による「援用」という行為が必要になりますが、時効期間が満了すると、通常、貸した金銭や売掛金は一円も返ってこない状態になります。債権者としては個々の債権について時効がいつからスタートし、どの程度の期間の経過によって満了するかを把握して、その前に全額回収を図るか、適宜時効の進行をストップさせる(時効中断)といった手段を講じる必要があります。
これらの管理業務は、金融機関等では「時効管理」と呼ばれており、非常に重視されています。

時効進行のスタート時点

時効期間は、法律上「権利を行使することができる時」(民法166条1項)から進行し、期間の末日の終了をもって満了します。通常、確定した支払い期日が定められている場合にはその翌日から時効が進行しますが、特に期限が定められていない場合には債権が成立した日の翌日から進行します。

時効期間はいつ満了するか

時効期間は、個々の債権の性質により変わります。商事債権(会社の取引や商行為による債権、賃料等)は5年、それ以外の民事債権(個人間の貸付等)は10年というのが原則です。
しかし、それよりも短い「短期消滅時効」というものも民法や各種法律で定められており、注意が必要です。たとえば、工事業者の工事請負代金、医師の診療報酬等は3年、商品の売掛金、労働者の給料債権、学校や塾の授業料は2年、運送費や旅館・飲食店の代金等は1年、小切手債権は6ヵ月等と特別に規定されています。各業界において、その業態ごとに債権の性質を踏まえて、その時効期間が何年であるかを把握しておく必要があります。

時効をストップさせる方法(時効中断)

時効をストップさせる方法、すなわち時効中断の方法には下記の3つがあります(民法147条)。
(1)請求
(2)債務者の承認
(3)差押え・仮差押え・仮処分

(1)の請求については、基本的に訴訟提起(あるいは支払督促、調停申立て)を行う必要がありますが、「催告(一旦書面で請求すること)」でも構いません。ただしその場合には、日付と内容を立証できるように内容証明郵便で送付することが必要です。また、書面で請求後6カ月以内に訴訟を提起しなければ、結局時効は中断しないことになりますので、注意してください。

実務上は、債務者に債権を認めさせるという(2)「承認」もよく用いられます。承認には特に方式等は定められておらず、債務者による債務の一部弁済も原則的には、承認と認められています。したがって、分割払いがなされているうちは、原則として時効が中断することになります。
また状況によっては、(3)差押え・仮差押え・仮処分を用いることも考慮しなくてはいけません。

その他、弁済猶予の依頼、延期証の差し入れ、代金減額の申し出、担保提供等も時効中断の効果をもちます。
このように時効中断には様々な方法があります。
管理している債権の分量が多くなってくると、その保有している債権の種類も多様になり、個々の債権について時効期間がいつ満了するかを把握しきれない場合があります。債権の回収・管理における重要な指標として、「時効」という観点から、債権を管理されてはいかがでしょうか。

弁護士法人中央総合法律事所 / 弁護士 中村 健三

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